2012年11月18日日曜日

金星を追いかけて(アンドレア・ウルフ)|読書記録


今年2012年は、5月の終わりに金環日食があり、それなりの報道もされて盛り上がっていました。僕も通りがかりの人に観測グラスを借りて金環日食を見ました。でも、その直ぐあと、6月にあった金星の太陽面通過についてはメディアの扱いは金環日食ほど大きくなかったように記憶しています。
実は金環日食は、地球上のどこかではほぼ毎年見られるものです。一方金星の太陽面通過については、次に地球上から観測できるのは2117年であり、レア度の面ではこちらのほうが貴重な天文現象でした。現象の派手さからいくと、日食のほうがインパクト大きいかもしれませんけれど。そう言いながら、私は見逃したので、リアルタイムで見たいと思ったらあと105年ほど健康に生きなければいけないのですが。
このアンドレア・ウルフの『金星を追いかけて』という本は、1761年と1769年の金星の太陽面通過の際に起きた、「史上初の世界的な科学プロジェクト」について、多くの文献を元に書かれた本です。そのプロジェクトに関わった人々を軸に、臨場感のある語り口で綴られた群像劇であり、関わった人々ひとりひとりのドラマ、当時の世界情勢や、世界に対するこの天文現象のインパクトなどが読み取れ、初めから終わりまで楽しく読めました。
高校生の頃に学んで微かに記憶の底に残っている歴史上のイベント、人名や地理上の名称などもそこかしこにあって、それが実際に人の人生に影響を与えてひとつの物語となっているのを読むと、あの頃詰め込んだ知識はたしかに世界とつながっていたんだなあと感慨深いです。その点では、学生のの頃にこういう本を読んでいたらよかったのかもしれないなとも思いました。

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