2012年2月14日火曜日

ロバート・F・ヤングと時空旅行へ行こう

僕がはじめてロバート・F・ヤングの本を読んだのは大学1年か2年のことだと思う。高校生の頃好きだった漫画の一つに木村紺の『神戸在住』があるのだけれど、主人公が本好きの女の子で、時折、実在の本を読んでいる描写がある。そのひとつにロバート・F・ヤングの『ジョナサンと宇宙クジラ』があり、その奇妙に印象に残るタイトルは僕の頭の裏っかわあたりにこっそりと貼りついていたらしい。

その頃僕はつつじヶ丘に住んでいて、そこはなぜだか駅前に書原があったり、置いているものは漫画が大半とはいえチェーンでない古本屋が何軒か軒を連ねていたりしてほんの少し文化的な街だった。そしてその古本屋で立ち読みのついでに文庫本を漁っていたときに『ジョナサンと宇宙クジラ』を偶然見つけてしまったのである。どこかで見たタイトルだなあと思いつつ思い出せずに、それでも(100円だったし)レジに持っていった。本当にそこで出会ってよかったと思う。結果としてこの本は今も手元に残してある数少ない本の一つになった。

僕の読んだロバート・F・ヤングの物語はどれもSFまたはファンタジーなのだけれど、描かれているのはどんな環境でもさして僕らと変わらない人の心情のように思える。タイムトラベルをしたり火星人に出会ったり、宇宙クジラに飲み込まれたり、存在を半分持って行かれたりするけれど、基本的には僕らと変わらない人間の心の機微であったり、ふれあいであったりが描かれて、それがまたどうにも懐かしい感じで胸を締め付けるのである。

手元に持っているのは『ジョナサンと宇宙クジラ』だけだが、最近、他の著作も読んでみたいと思い図書館や書店を回って読んでみたがやはりどれも素晴らしい。特に『時が新しかったころ』はもう読んでいて楽しくて嬉しくて困ってしまうくらい。しかし邦訳されている作品どうしてこんなに少ないのだろう。原著で読もうにもそちらも手に入るものが余り見当たらないし。