外界の情報が選別されずに頭に流れてきてしまうがゆえに、パターン化した行動や、多くの自分ルールをもって生活する少年クリストファー。ぼくとは違った世界の見方をするそんな彼の言葉で語られた物語。
クリストファーが、自分の体験したことについて書いた本、というのがこの本の構造になっています。物語の前半は、題名になっている事件について気にかけながらの日常生活を彼の言葉で描写されています。様々な事象にたいする彼の考え方、周りの人の考え方や行ったことにたいする彼の考察、そういったものを通してぼくとはちょっと異なる彼独特の世界観について丁寧に丁寧に描いています。
事件の核心が明らかになる物語のターニングポイントを境に、物語の後半は彼が自分を守るために作った世界から出て、自分の世界を広げていく過程が描かれます。自分の世界を広げるのは誰にとっても簡単なことではありません。そういう意味で、この物語の後半は冒険譚になっています。僕らはそれぞれに住みよい世界を持っているけれど、それはある日あっさり壊されることもままあります。特に社会的に弱い人達の世界は。
そんなときにいじけず恨まず、自分にできる最善と信じることを実行するのは、きっと簡単なことではないと思うのです。それはきっとクリストファーの冒険のように困難に満ち、意志の力と忍耐を必要とするものでしょう。
多くの人はきっと彼よりも、彼の周りにいる父親や母親などの登場人物たちのほうが感情移入するかもしれません。そんなにも彼の考え方はぼくのものとは違うようにみえます。でも、クリストファーほど異なることはそう多くないにしても、人の考えかたや世界観というものはもともと一人ひとり違うものですよね。ひとの頭の中は覗けないけれど、みんな違うんだってことは常に頭に入れて想像力を持って生活したいものです。
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