先週、近所の珈琲屋さんに行った時に、久しぶりにサウジアラビアから来ている留学生の男の子に会いました。以前は近くの日本語学校に通っていたらしく、よくその珈琲屋さんで顔を合わせていたのですが4月から神奈川の大学に通うということで引っ越してしまってこの界隈にはあまり出没しなくなっていたのでした。
珈琲屋さんのカウンターに座るなり、店主に「いまラマダーン中だから飲まなくていい?」と訊ねます。
「ラマダーン中は水も飲んじゃだめなの?」
「だめ」
「そっか。じゃあゆっくりしていきなよ。」
じゃあ何しに珈琲屋にきたのだ、と思いましたが近くで知人との待ち合わせるのに時間潰すついでに挨拶にきたようです。何も注文しないのですが店主も来てくれたのが嬉しいという様子でニコニコしながら言葉をかわしていました。
ラマダーンというのはイスラム教のひとびとが使っている暦において9月に当たる月で、イスラム教の人たちは断食をすることになっている月です。断食と言っても日の出から日没までの間で、日が沈んだのちは特に制限なく食事をするそうです。イスラム教の人達が使うヒジュラ暦は太陰暦で季節を反映していないのでラマダーンは冬だったり夏だったりします。
このときラマダーンと聞いて、1年と少し前に東京ジャーミイという代々木上原にあるトルコ大使館管理下のモスクの見学に行ったことを思い出しました。日本人のムスリムの方がいろいろ解説しながら案内してくれたのですが、お話の終わりにラマダーンの時期には断食明けの食事をムスリムでない人にも振舞っているので是非食べに来てくださいと言っていたのです。このラマダーンの断食明けに食べる食事のことをイフタールというそうです。
早速、前回一緒に東京ジャーミイを見学に行った友人に連絡して一緒に行ってみることにしました。
代々木上原の駅から南にでて井の頭通りを渡り、通りに沿って坂を登って行くとモスクの塔、ミナレットが見えてきます。19時ころに到着するとまだ皆さん礼拝中なのか、ホールは人がまばらでした。ベビーカーを押す女性や、僕らと同じように見学に来たように見える日本人の方などがホールの売店を覗いていました。
19時を少し回るとスカーフを巻いた日本語を話す女性の方が案内をはじめました。金属製のプレートにパスタのようなものと、2種類のスープ、お肉の入った煮物のような物を盛りつけてくれます。
食堂で友人とお話しながら食べていると、礼拝が終わったのかどやどやといろんな人種のひとたちがやってきました。一緒のテーブルに座ったトルコ人の男性が日本語を話す人だったので、少しおしゃべりしました。
彼がはじめてラマダーンまるまるきっちり断食できたのは8歳の時で、以来17年間毎年やっているそうです。辛くないのかと聞くと、大丈夫だよ、となんでもないことのように言っていました。その日も神奈川の会社でフルタイムの仕事をしてからやってきたんだそう。みんなでこうやって集まってごはんを食べるのは楽しいと言っていました。
17年もやっていれば、僕には大変そうに思えることも当たり前の事になるんだろうな。
次から次へと食堂に人がやって来るので、食べ終わった僕らは早々に退散しました。
東京ジャーミイ・トルコ文化センター